第一回戦 開始時刻
Nのフィールドに設けられた特設リング
青コーナーには既に水銀燈の姿が
水「このローゼンメイデンの中で最もアリスに近いこの私を待たせるなんて・・・い い度胸してるじゃな〜い」
トーナメント第一回戦、水銀燈VS翠星石の試合が行われようとしていたが・・・
試合開始時間になっても一向に姿を現さない翠星石に、水銀燈はあきれ顔
水「ちょっと、真紅とそのミーディアム、あの臆病者はどうしたっていうの?まさか、本当にびびって逃げ出したんじゃないでしょうね?」
リングの前にある解説席では、無理矢理連れてこられたジュンと、興味があるのでみたいという巴、真紅、金糸雀の4人が座っている
ジ「おかしいなぁ、今日の朝は『打倒、水銀燈ですぅ』とかわめいていたんだけどなぁ」
真「彼女が逃げるなんて・・・考えられないわ」
水「いいわ、後5分だけ待ってあげる。それでも来なかったら、レフェリー、翠星石の試合放棄として私の勝ちを宣告しなさい」
と、ジュンをにらみつける
ジ「え?ぼく?(・・・勝手にレフェリーにされてしまった)」
金「翠星石どうしちゃったのかしら・・・ちょっと様子を見てくるかしら」
金糸雀、選手控え室に向かっていった
真「・・・(深刻そうな顔つき)」
それを見たジュンは
ジ「大丈夫だって、あいつは必ず来るよ」
真「ええ・・・私たちに出来ることは信じることだけなのだわ」
真(不戦勝なんてことになったら・・・データはおろか水銀燈は万全の状態で・・・いったい翠星石は何をしているの!?)
それから5分後
水「・・・レフェリー、時間は?」
ジ「・・・5、4、3、2、1・・・くそっ、約束の時間だ」
水銀燈、ため息混じりに
水「まさか、本当に逃げ出すとわねぇ・・・ローゼンメイデンの恥だわぁ。さあ、レフェリー約束通り私の勝ちを宣告・・・」
その瞬間!
?「誰が逃げたですって?」
銀「誰!?」
そう水銀燈が叫んだとたん、素早い影がリングの中に入り、彼女の背中にドロップキックを放った
銀「きゃあっ」
?「これは、私をローゼンメイデンの恥と罵ってくれたお礼です」
突然の出現に一同驚く その正体は・・・
真「あの、服、体型、長い髪、口調・・・」
ジ「翠・・・星石?」
その影の正体は、いつも通りの翠星石だった!只、頭にかぶっている緑のヘルメットを除けば・・・。
突然の攻撃に膝をついた水銀燈
水「遅れてきたにもかかわらず、背後から蹴りとは・・・随分卑怯なことやってくれるじゃなーい。翠星石!」
水銀燈が不気味な笑みをつくりながら起き上がり、翠星石をにらみつける
翠「・・・遅刻したことは謝るです。でも、水銀燈・・・お前に卑怯と言われたくはないです」
ヘルメットの影のせいで翠星石の眼が見えないが、おそらくい水銀燈をにらみつけ返している
翠星石の突然な登場に呆気にとられているジュン。そんなジュンに
真「何をやってるのジュン!?はやく、ゴングをならしなさい!」
ジ「へ?ご・・・ごんぐ?」
カーーーーーーンッ!
12時5分 水銀燈 VS 翠星石 開始
パニック状態のジュンにかわり、隣に座っていた巴が勢いよくゴングをたたいた
真「・・・まったく、使えないしもべね」
ゴングが鳴ってから、最初に口を開いたのは水銀燈だった
水「その似合わないヘルメットは何?そんなに私の攻撃がこわいのぉ?クスクス」
翠「・・・・・」
水「うふふ、大丈夫よぉ。いくら叩いても、もうそれ以上おばかさんにはならないと思うからぁ」
翠「ピーチクパーチクうるさいですね。そんなに怖いなら翠星石から行ってあげるですよ。」
ジ「流石口悪性悪人形。口だけは水銀燈にひけをとらないな・・・」
真「問題は、あの水銀燈相手にどう戦うかだわ」
水「威勢がいいのは結構だけどぉ。うふふ・・・すぐに泣き虫に戻してあげるわぁ」
そういうと、水銀燈は翠星石に向かって走り出し、つかみかかろうとしてきた
しかし、翠星石はしゃがみ込んで手をよけ、水銀燈の片足をつかみ、体全体を使って回転するように思いっきり刈り込んだ
その見事な技に、一同は驚き
ジ「え?な、なんで二人とも回転したんだ?」
真「あの技は・・・」
巴「ドラゴンスクリュー!」巴が真紅より早く叫んだ
ジ「ドラゴンスクリュー?あの技の名前?」
巴、こくりとうなずく 翠星石の美技にかなり興奮している
真「・・・巴、以外と詳しいのね」
一番驚いたのは水銀燈だ いつのまにか自分がマットの上にうつぶせになっていたのだから
水「なっ・・・なにが起こったというの?なぜこの私がマットにうつぶせに寝ころんでいるというのよ!?」
今一状況をよくのみこめていない水銀燈。そんな水銀燈に遠慮することなく、翠星石が水銀燈の両足を関節技にきわめていく
真「今度は」
巴「インディアンデスロック!」
真「・・・」
水「痛!・・・痛い痛い!・・・ちょっとぉ!何するのよ!真紅!?これは反則じゃないの?レフェリー!こいつを止めなさいよぉ!」
一同「・・・え?」
真「・・・水銀燈、貴方まさか・・・プロレスのルールを知らないの?」
水「え?」
ジ「今翠星石がかけているのはいわゆる関節技だよな?何か問題なのか?」
巴「・・・いえ、技のフォーム、足首への力加減ともすばらしいわ。強いて言うなら腰をもっと落として体重をかければ・・・」
真「水銀燈?あなた、何をするかと思って・・・」
水「うっうるさい!うるさい!」
水(くっ・・・こんなことならちゃんとめぐに聞いておけば・・・)
翠「ふんっ、ルールも分からず参加なんて、とんだ笑いもんです」
水「ぐっ・・・!」
翠「いいこと教えてやるです。『ギブアップ』って情けない声で叫んだら、この技から解放してやらないこともないですよ」
水「ふふふ・・・おばかさぁん!この水銀燈にギブアップの文字はないわぁ!・・・ぐっ!」
翠「・・・やっぱりそう言うと思った、で、す!」
そうしゃべり終えると同時に、足首をしめる力をあげていく
真「・・・何かしら、この違和感は」
ジ「どうしたんだ真紅?翠星石が有利なんだぞ?」
真「・・・そうだわね」
水「ぐっ・・・うふふ・・・あっはっはっは!」
翠「!?」
水「調子にぃ・・・のるんじゃ・・・ないわよ!!!」
水銀燈の背中にある黒い羽が伸びていく
水「くらいなさい!」
そういって、インディアンデスロックをきわめていた翠星石の背中に思い切り羽をたたきつける
翠「きゃあ!」
翠星石、ロープ際まで吹っ飛ばされる
巴「あっーーーと!ここでようやく水銀燈の反撃!ブラックウィングだぁー!!」
真(実況!?)
ジ「へぇー、あの水銀燈の技ってブラックウィングっていうんだ」
少しの沈黙のあと、巴が恥ずかしそうに
巴「ううん、今とっさに考えたの・・・// //」
ジ「えっ、そ・・・そうなんだぁー」
真「・・・巴、恐ろしい子」
水「そんな地味〜な技、私には通用しないわよー。そぉ〜れ!そぉ〜れ!」
水銀燈、自分の羽を鞭のように使うことで、翠星石を近づけさせないようにしている
巴「あっーーーと!水銀燈、ブラックウィングを使って翠星石を寄せ付けていない!この技をどう思いますか、桜田さん?」
ジ「え?ぼぼぼく?えっえーと・・・かっこいいかも」
真「一見ワンパターンなだけに見えるこの技だけど・・・攻撃だけでなく、翠星石を近づけさせない防御の面でも役割を果たしている」
真「過去に私を苦しめただけある、とても効果的な技だわ。一気に攻守逆転したわね・・・」
巴「なるほど、解説ありがとうございました真紅さん。このブラックウィップ、いつまで続くのでしょうか」
ジ(・・・また考えだしたのか)
真「私のローズウィップとかぶるのだわ」
水(最初からこうすれば良かったのね)
水「ほぅらぁ、どうしたの?翠星石ちゃん。泣きながら『ギブアップ』って叫んだら止めてあげないこともないわよぉ」
鞭を避け続けていた翠星石 しかし、疲れたのか片膝をつき止まってしまった
そのチャンスを逃すはずのない水銀燈
黒い羽の右翼が、翠星石の左手に巻き付く
水「つかまえたぁ♪」
巴「あっーーーと!翠星石、ついに捕まってしまったー!」
真「これは危険なのだわ・・・あの羽にからみつかれては、はずずことは難しい・・・」
ジ「真紅・・・」
真紅は左手で右肩をさすりながら言った
真「・・・もし、水銀燈が私にやったことと同じことをしそうになったら・・・分かってるわね?ジュン」
ジ「うん、分かってる」
真(ジャンクになる恐ろしさは貴方が一番知っているはず・・・水銀燈)
左手をつかまれた翠星石、身動きせずにじっとしている いや、口だけがかすかに動いている 何かをつぶやいているように・・・
水(抵抗すらしないなんて・・・まあいいわ両手を封じてギブアップさせてやる)
水「さあ!今度は左手よぉー!」
左手を捕まれているので、逃げ出すことが出来ない
水銀燈の左翼が翠星石の右手につかみかかろうとしたその瞬間!!
翠「ベルリンの赤い雨ぇ!!」
ズサー!!
バサリッ・・・
その場にいた者には、いったい何が起こったのかすぐには分からなかった
ただ、翠星石の右手だけが赤く炎に包まれ・・・燃えていた
その短い沈黙を破ったのは、巴の声だった
巴「あっーーーと!水銀燈の左翼が切断されたぁーっ!!」
翠「ベルリンの赤い雨ぇ!!」
その叫びとともに、翠星石の右手が真っ赤に燃え、つかみかかろうとした左翼を切断した
銀「な・・・なんですってぇ!」
突如燃えだし、自分の左翼を切断されたことにおどろきを隠せない水銀燈
それは、真紅達も同じであった
真「そっそんな・・・あの技は・・・」
ジ「あ・・・あれってルール上OKなのか?真紅」
真「アリレスのルールでは、凶器の使用は認められていない。例えば、庭師の如雨露、鋏、水銀燈の剣などね。でも、あらかじめ自分の持つ能力や、体の一部を変化させての攻撃は合法なのだわ。」
真「おそらく、彼女は自分に右手を刃物のようなものに変化させ、炎をまとわせることで切れ味をあげているのだわ」
ジ「そうかぁ・・・なるほど。でも、あいつあんなことできたかな?」
真("ベルリンの赤い雨"たしかに彼女はそう言った・・・とすると、私と同じく何らかのアレを持っているはず・・)
翠「何間抜け面してるですか?今度はこっちの羽ですよ!ベルリンの赤い雨ぇ!」
翠星石は、自分の左腕にからみついている右翼に向かってベル赤をくりだした
水「ちっ」
それをいち早く察知した水銀燈 間一髪、羽を翠星石の左腕からほどき逃がす
翠「あのときと同じく、また翼を切断されるとは、何とも皮肉ですね!」
水銀燈、真紅達と戦ったときのことを思い出しながら
水「生意気な口を!(自分がやったわけでもないくせに)」
巴「さあ、一進一退の攻防が続いているこの勝負、どちらが勝つのであろうか、まったく予想できません!」
ジ「意外にやるなぁ翠星石。これは勝てるかもしれないぞ、なあ真紅、真紅?」
真「・・・ええ」
翠「今度はまた・・・一刀両断にしてあげるっです!!」
水「くっ!」
翠星石、間合いをつめようと水銀燈に近づく
一方、そうはさせないと自慢の長い足でやくざキックをはなつが・・・
翠「その片足・・・待ってたですよ!」
翠星石、素早く水銀燈の背後に回る
そして、水銀燈に片足を上げさせたまま、なおも両腕を交差させてかんじがらめにする
水「うっ動けない・・・」
そのまま、水銀燈をスープレックスで投げる
翠「くらえ!ビーフケーク・ハマー!!」
ドゴーン!
水「ぐふっ!!」
巴「あーーーと!変則型のスープレックス・・・ビーフケーク・ハマーだぁ!!水銀燈、頭を強打したぁー!」
真「ま・・・また・・・」
ジ「すごい・・・翠星石がおしている」
翠星石、頭を抱えて寝転がっている水銀燈に近づく
翠「・・・ベルリンの赤い雨!」
翠星石の右手に炎がともる
真「!?」
ジ「どっどうするつもりだ?」
真「まさか、あの右手を水銀燈に突き刺す気じゃ!?」
翠「・・・くらえ!」
水銀燈の腹めがけて、右手を突き刺そうとした瞬間・・・
?「その勝負、待ちやがれぇー!!ですぅ!」
一同「!?」
一同、その声がする方に眼を向けた
その正体は・・・なっなんと!?
ジ&真「す・・・翠星石ぃ!?」
巴「あーーーーと!突如現れた人物は、またしても翠星石だー!」