時は少しさかのぼり、真紅 VS 二(ツヴァイ)の試合開始5分前
ジュンと巴は、ジュンの家へと戻り、早速渡されたURLを入力しアクセスした
ジ「なんだこの風景?何処かのカメラの映像みたいだな」
巴「この場所・・・見覚えがある、雛莓と一緒に来たことがあるわ」
カメラが真紅と二(ツヴァイ)を映す
ジ「真紅だ!それと・・・あの人形、見覚えがあるぞ」
巴「薔薇の四天王と名乗っていた1人だわ」
2人が映し出されている映像について喋っていると・・・
映像にテロップが流れた
『実況をお願いします ポケットの中から小型マイクを取り出して下さい』
ジ「小型マイク?うあ!いつの間に・・・」
ジュンと巴がポケットの中を確認すると、いつの間にか小型マイクが入っていた
巴「これ・・・ちゃんと使えるのかしら?」
ジ「試してみよう お〜い、聞こえるかぁ?真紅―!真紅―!」
ジュンがマイクのテスト中に、試合開始のゴングがなる
真紅――!
真「ジュン!?」
聞き覚えのある声を聞き、とっさに後ろを振り返る真紅
真紅に突進していた二(ツヴァイ)がその隙を見逃すはずもない
二「余所見は禁物ですよ!」
バシンッ
真「ぐっ・・・」
二(ツヴァイ)のパンチが真紅の背中をとらえる
ジ(たっタイミングの悪いときに呼んじゃった・・・)
巴「あ――――――っと!二(ツヴァイ)、余所見をしている真紅に対し不意打ちパンチだーっ!」
真「今度は巴!?」
二「言い忘れていましたが、貴女のマスターとその連れの方は、この試合を御覧になっているのです」
真「二人とも、見ていてくれるのね」
二「本来なら実況の声のみ流れるはずでした・・・この試合を見ているのは他にもいらっしゃいますからね。出来れば実況以外の私語は慎んでもらいたいところですが」
真「他にも?ふん、まあいいわ。ジュン達が見ているのなら手は抜いてあげられないわね」
二「くくっ・・・ご冗談を」
真「今度はこちらから行くわよ!てあっ」
ガシッ
巴「あ―――っと、まずは力比べ、両腕でのハンドシェイクだ―――っ!」
ジ「(さっき微妙に怒られたな)力は五分五分といったところか・・・」
真「ふん、そんなものなの?私はまだフルパワーじゃないわよっ!ふんっ!」
真紅が力を入れたことで、少しずつ二(ツヴァイ)が後退していく
真「どうかしら?これで・・・どう!?」
真紅が再び力を加えたその瞬間
二「(ニヤッ)かかりましたね」
真「なっ」
二(ツヴァイ)、右腕の手を離し両手で真紅の右腕を素早くつかみ自分の肩にのせる
二「せいっ」
ドォン!
真「ぐはっ」
真紅、まるで自分が魚で釣られるように一回転し、マットに叩きつけられた
巴「こっ・・・これは一体どうしたことでしょう!?先ほどまで力比べをしていたはずの二人が、あっという間に二(ツヴァイ)が真紅をマットに叩きつけてしまったぁ―――!」
ジ「これは・・・一本背負い!柔道の技だ!」
巴「一本背負い?でも、柔道の技には決まった型があるはずじゃ」
ジ「この一本背負い、技の入り方はオリジナル・・・相手の拳をアームブレーカーの形で肩に乗せ、そこから普通の一本背負いへと連絡している!」
巴「なるほど!つまり、この一本背負いは対レスリング用へと改良しているわけですね」
真「うっ・・・まさか、この私が先にマットに寝ることになるなんて・・・」
二「まだ終わってませんよ!」
すかさず仰向けに倒れている真紅の右腕をつかみ、腕ひしぎ十字固めを仕掛ける
真「くっ、そうはさせない!」
伸ばされそうになった右腕を、すかさず左手でつかみクラッチする
巴「あ―――っと!今度は腕ひしぎを仕掛けようとする二(ツヴァイ)、しかし真紅が何とか左手でクラッチすることに成功する―――っ!」
ジ「危機一髪・・・何とか腕を守れたか」
真「腕ひしぎ十字固め・・・簡単な割に強力な破壊力を持つ関節技」
二「・・・」
真「それ故、腕十字の警戒は怠らないわ・・・つねに防護策は完璧なのよ・・・残念だったわね」
二「完璧?ふふっ・・・完璧とはそんなに安易な言葉でしたかしら」
二(ツヴァイ)、腕ひしぎ十字固めをとき立ち上がる
二「まあ、ここまでガードを固められてはこの技は無理でしょう」
真「偉そうなことを言ったわりに素直なのね」
真紅もほぼ同時に立ち上がる
巴「さあ―両者ほぼ同時に立ち上がり、再びふりだしの形へとなったぁ―」
ジ「どうやら二(ツヴァイ)って奴、柔術を身につけているな」
巴「先ほどの一本背負い、腕ひしぎ十字固めですね」
ジ「そうそう。でも、残念ながらさっきの一本背負いは真紅には大して効いてない。」
巴「効いてない?あれほど豪快に背中から着弾したのにですか?」
ジ「もしあの場所が畳などの堅い床なら相当なダメージだっただろうけど、あそこは比較的柔らかいマットの上。だから、柔道の床に叩きつける投げ技は効果が薄いんだよ。」
巴「なるほど!マットの柔らかさが衝撃を吸収してしまうわけですね」
ジ「投げ技は大丈夫、後は関節技、絞め技などに気をつけないとな」
真「ジュンが言ってるように、はっきり言ってさっきの投げ技効いてないわ。ジュードーが得意なら、もっと堅い床を用意しておくべきだったわね」
真紅が勝ち誇ったような顔で言うが
二「ふふっ・・・おかしい」
二(ツヴァイ)はまったく動じない
二「お忘れですか?ここが何の試練であるかを・・・」
真「ふん・・・勿論よ」
ジ「試練って・・・たしか3人が入っていったそれぞれの穴の名前が"投げ技"、"打撃技"、"関節技"だったような・・・。真紅が入っていったのは"投げ技"の洞窟!」
巴「薔薇将軍の言ったことが真実なら、彼女・・・二(ツヴァイ)は"投げ技"を得意とすることになるわね」
真「勿論、覚えているわ。貴女は投げ技を得意とするのよね。実際さっきのジュードーにはびっくりしたわ。でも・・・」
真紅は足でマットを二三回踏みながら
真「このマットじゃ貴女の得意な投げ技を生かすことができないわね」
・・・と挑発するような仕草をみせる
二「ふふっ・・・案の定、まだ理解していないようですね。」
二(ツヴァイ)、呆れ口調で
二「いいでしょう、分からせてあげましょうか」
真紅に向かって低空タックルを試みる二(ツヴァイ)
巴「お―――っと!またしても二が先に仕掛けたぁ―!」
ジ「あいつ、また先手をとられて!」
真「読んでいたわ!」
真紅、低空タックルがくることを予測し、がっちり二(ツヴァイ)を捕まえる
二「!?」
真「今度は私の番よ!」
真紅、二(ツヴァイ)をしっかりとつかんだまま、徐々に空中へ持ち上げる
巴「あ―――っと!低空タックルを先読みしていた真紅!そのままがっちりと抱え込みながら持ち上げるぅ―!!」
ジ「けど、投げ技は効きにくいはずだぞ!どうするつもりだ」
真「背中から受け身をとることが安易な技なら意味がない・・・ならば!」
真紅、二(ツヴァイ)を逆さ向きに抱え込んだまま大きくジャンプ
真「頭から着地させる!!」
両膝で二(ツヴァイ)の頭を固定
真「S・ドライバー(真紅ドライバー)!」
ドゴォン
巴「決まったぁ―――!二(ツヴァイ)の頭がマットに激突ぅ―――!見事なパイルドライバー・・・いえ、S・ドライバーです」
ジ「考えたな真紅、いくらマットでも頭から食らえば相当なダメージになるぞ!」
二「・・・流石・・・やりますね」
真「まだまだこれからよ!」
うつぶせに横たわる二(ツヴァイ)に起き上がる隙をあたえず、馬乗りになる
そして、なにやら複雑な関節技を二(ツヴァイ)にかけていく
ジ「なんだ?あの真紅の技は?」
巴「なにやら複雑な技を仕掛けている真紅ですが・・・もしやあの技は!」
真「足はこれで完成!そしてこれで全てが完成よ!STF!」
二「う・・・ぐ・・・」
巴「決まったぁ―――!STF(ステップオーバー・トゥー・ホールドウィズフェイスロック)だぁ―――!」
巴「STF・・・二種類の異なる技同時にかける高難易度技。そして、この技のもっとも恐ろしいところ・・・それは」
ジ「あっ二(ツヴァイ)が技をはずそうとしている」
ニ(ツヴァイ)、足のトゥー・ホールドを力任せに外そうとするが・・・
二「!?」
逆にフェイスロックの威力が増してくる
巴「この技の恐ろしさ・・・それは、フェイスロックをはずそうとすればその反動でトゥー・ホールドが、逆にトゥー・ホールドをはずそうとすればフェイスロックがそれぞれよりきわまることにある」
ジ「へぇー、真紅の奴やるじゃん!」
巴「恐らくこれで決まりです」
真「無駄よ二(ツヴァイ)、こんなにうまく決まってしまっては、この技から逃れるのは不可能・・・ギブアップしなさい」
二「・・・」
真「そう、なら仕方ないわね!」
さらに技に力を入れる真紅
二「ぐぅ・・・」
真「さあ、このままでは背骨が折れてしまうわよ!」
二「ぎ・・・」
巴「どうやらギブアップのようですね」
ジ「よし、これで一勝だ!」
――カツン
――コツン
真紅の勝利が確定したと二人が思ったその瞬間、何者かがリングへと近づいてきた
ジ「あれは・・・」
――カツン
――コツン
ハイヒールの音がリングに近づいてくる
真「あなたは・・・」
二「おっ・・・お姉様!」
薔「・・・」
その正体は、薔薇水晶
リングの側まで近寄り、二(ツヴァイ)を見つめている
二「薔薇水晶お姉様・・・もっ申し訳ありません!このような無様な姿を晒してしまって」
薔「・・・第二ドール、私の可愛い妹」
二「はい」
薔「・・・"目的"の達成、それが私たち姉妹の使命・・・それを忘れないで」
二「心得ております」
――カツン
――コツン
再び去っていく薔薇水晶
真「待ちなさい薔薇水晶、"目的"とは一体・・・」
薔「・・・」
何も言わず、その場から消える
二「お姉様、ありがとうございます。私は"目的"のため・・・負けるわけにはいかない」
真「いくらやる気になってもこの技から逃れることは不可能よ
」真紅のSTFがより二(ツヴァイ)を締め付ける
二「あまり使いたくなかったのですが・・・そうも言ってられませんね」
真「?」
二「メタモルフォーゼ『部位軟体化』!」
真「あら!?」
二(ツヴァイ)の足が真紅のトゥー・ホールドから抜ける
真「そんな、私の技は完璧だったはず!?」
巴「あ―――っと!どうしたことか、あんなに完璧だったトゥー・ホールドが突如破れたぁ―!」
二「足が抜ければこちらのもの・・・」
二(ツヴァイ)、素早く立ち上がり背中の真紅の襟首を掴む
ジ「背負い投げの姿勢だ!」
巴「あ―――っと!二(ツヴァイ)、背負い投げを仕掛ける!」
二「ただの背負い投げでは終わりませんよ!」
二(ツヴァイ)、背負い投げから更に技を仕掛ける
二「背負い式パイルドライバー!」
ドスンッ―!
真「がはぁ!」
巴「なっなんと、背負い投げから直接落ちてくる相手の頭を両腿にはさみパイルドライバーを仕掛ける超人技だぁ―――!真紅、頭からもろに着弾、これは相当なダメージだぁ―!」
ジ「なっなんて技なんだ・・・柔道とプロレス技の複合技なんて、見たことない!」
二「立って下さいよ、真紅。せっかくメタモルフォーゼをしたのですから」
真「うぐ・・・」
真紅、ゆっくりと立ち上がる
真「そういえば、私の技から抜ける直前変なことを口走っていたわね・・・」
二「そうです、今の私は部位を軟体化させることが出来るのです」
真「軟体化ですって!?」
二「ご存じですか?柔道でもっとも必要な能力、それは力では無く体の柔らかさ・・・。私の持つ部位軟体化能力と相性がとてもいいのです。」
ジ「そうか、だから柔道を技にしていたのか」
巴「今明かされる、二(ツヴァイ)の能力!真紅は一体どう立ち向かうのでしょうか!」
二「"柔よく剛を制す"、この言葉通り私は貴女を倒します」
真「いいわ・・・そろそろ、この戦いに決着をつけてあげるのだわ!」
真紅、相手に向かってチョップを仕掛ける・・・が
二「ふふふっ・・・無駄です」
二(ツヴァイ)にまったく当たらない
巴「真紅、二(ツヴァイ)めがけてチョップの嵐、しかしまったく命中しておりません!」
ジ「もしかして、さっきのパイルドライバーのダメージがまだ・・・」
真「てやぁ―――!」
モーションの大きい真紅の逆水平チョップは見事に空振り
そこにすかさず
二「ボディががら空きですよ」
低空タックルを試みる二(ツヴァイ)
巴「あ―――っと!隙が大きいチョップがはずれ、二(ツヴァイ)が低空タックルだぁ―!」
ジ「何やってるんだ!あれじゃあ攻撃してくださいって言っているようなもんだよ!ん?・・・そっそうか!」
真「かかったわね!」
真紅、二(ツヴァイ)のタックルをまるで分かっていたかのようにチキンウィングにとらえる
ジ「そうか、さっきの攻撃はチキンウィングにとらえるまでの布石!」
巴「真紅、チョップを囮に二(ツヴァイ)をとらえたー!」
二「なるほど・・・先ほどのチョップは囮でしたか。しかし、たかがチキンウィングごときどうってことありませんがね」
真「ふふふっ・・・残念ね、二(ツヴァイ)、このチキンウィングは私の必殺技(フェイバリットホールド)への布石なのよ!」
巴「あ―――っと!真紅、必殺技予告だぁ!」
ジ「あいつ、そんなのできるのか!?」
真「STFのときに降参していればよかったものの・・・痛いけど、覚悟しなさい!」
二「・・・」
真「"両腕の絡みを強固にして 大地の巨木を引き抜く心構えで 敵の体を高く差し上げる"」
二「この技!?」
真「そして、"高く鷹の如く舞い上がる"」
巴「真紅、二(ツヴァイ)を抱えたまま空中に飛び上がったぁ―――!」
真「"宙で敵を独楽(コマ)の如くに回転させ両大腿(りょうだいたい)を押さえ体の自由を封じる"」
巴「こっこの技は・・・もしかして!」
ジ「あのキン肉バスターだとぉ!!」
巴「これは驚き!真紅、あの高難易度技、キン肉バスターを仕掛けている―――!」
真「早とちりしてもらっては困るわ、"更に両首のフックをより強力にするため、己の髪で相手の両首を縛り上げる"」
巴「し・・・失礼しました!この技はキン肉バスターではありません!」
ジ「ああ、真紅のツインテールが二(ツヴァイ)の首に巻き付いていく!」
真「このまま勢いよく敵をマットに叩きつければ完成!
巴「真紅、二(ツヴァイ)を抱えたまま勢いよくマットに落下していく―――!」
真「首・背骨・腰骨・左右の大腿部の五カ所が粉砕される!オリジナル必殺技!」
二「・・・」(小言で何か呟く)
真「真紅バスターッ!!!!」
ズド―――ン
巴「今マットに着弾!真紅バスターが決まったぁー!」
巴「真紅のオリジナル必殺技、今炸裂!角度、技のフォームと共に完璧だぁ―――!」
ジ「・・・何だ?真紅の様子がおかしいぞ?」
第三者から見た真紅の必殺技は成功したように見えた
しかし・・・
真「そんな・・・一体どうして!?」
真紅本人は青ざめている
巴「お・・・おっと?技は完璧に決まったかに見えましたが、真紅の様子がおかしいですね」
ジ「どうしたんだ?一体何があったんだよ、真紅!?」
真「・・・技の衝撃がない、いつも技が決まったときに私が感じる体を突き抜ける衝撃がないのよ」
ふふふ・・・
真「!?」
真紅の耳元から笑い声が聞こえる
二「素晴らしい必殺技でした真紅、危機一髪でしたよ」
逆さ状態になったままの二(ツヴァイ)、真紅に話しかける
巴「な、なんと!KO(ノックアウト)確実だと思われていた二(ツヴァイ)でしたが、まるで平気のようです!」
ジ「そんな馬鹿な!」
真「く・・・そんな・・・私の必殺技が失敗したなんて」
二「ふふふ、必殺技を破られたときのショックは、貴女のようにプライドの高い人ほど大きいでしょうね」
真「ぬっぬかしなさい!私の・・・私の必殺技が破れるはずないのだわ!!」
ジ「ま、まさかあいつ・・・また真紅バスターを!」
巴「あ―っと?真紅、破れた必殺技をもう一度仕掛けようとするのか?」
ジ「止めろぉー真紅!冷静になれぇ!」
真「ふふっ、大丈夫よ・・・今度こそ大丈夫・・・幸い、この状態でもう一度上に高くジャンプすれば!」
巴「お―――っと!真紅、もう一度技を仕掛けるため上空へと飛び上がったぁ―!」
二「・・・やれやれ、相当技を破られたのがショックのようですね」
真「だっだまりなさい!」
二「もっと頭がきれると思いましたのに、残念です」
真「減らず口を叩いているといいわ、これでこの勝負を終わらせる!」
真紅、できるだけ高く飛び上がり、今ゆっくりと下降していく
真「今から下降するわ!これで終わりよ、二(ツヴァイ)!」
二「・・・そうですね、これで終わりですね」
真「ふん、今更認めても遅いわ」
二「冥土の土産に教えてあげましょう、私が何故あの技をくらわなかったのか」
真「・・・」
二「この真紅バスター、もといキン肉バスター系は確かに協力。くらえば首・背骨・腰骨・左右の大腿部の五カ所が粉砕されるでしょう」
真「そう、それがこの技が必殺技である所以よ」
二「では、一番最初に衝撃がいくのは何処か?」
真「最初に衝撃?それは勿論首なのだわ!その首の衝撃から体のあちこちに衝撃が渡る」
二「そう・・・つまり、逆の言い方をすれば、首さえ衝撃を受けなければこの技は失敗するのですよ!」
巴「お―――っと!二(ツヴァイ)の口から今明かされた真紅バスター破り!」
ジ「あの短時間であんなに細かい分析をしたというのか!?なんて奴なんだ!」
二「貴女が地面に着地する直前、私は頭を浮かせ衝撃がくるのを防いだのです」
真「そっそんな・・・でも、首は私の髪で固定したはず!それが何故・・・」
二「所詮、髪は髪・・・少しなら首を動かすことぐらい可能でしたよ」
真「うぐ・・・し、しかし今回は絶対に、逃がしはしないのだわ!」
前回よりをホールドをがっちりする真紅
二「一度破られた技を使用するのは自殺行為ですよ?」
真「黙りなさい!くらえ、真紅バスター!!」
二「いいでしょう、今度は私も、前より素晴らしい真紅バスターを見せてあげます!」
二(ツヴァイ)、体を顔と腿がくっつくほど深く曲げる
真「なっ!?」
二「私の部位軟体能力、忘れたわけではないでしょう?」
その際、首に巻き付いている真紅のツインテールを両手で引っ張る
真「痛っ!か・・・髪が!?」
ジ「うわぁ!あれ!見てくれ!真紅と二(ツヴァイ)の位置が逆に!」
巴「なんという光景でしょうか!技をかける前は上に二(ツヴァイ)、下に真紅だったのですが、いつの間にか逆になっております!」
二「真紅バスターの弱点、それは貴女の自慢のツインテールです!!」
真「か・・・髪に引っ張られて体の位置が逆に!?」
二「それでは貴女のおっしゃったとおり・・・これで終わりですね?」
真「あっ・・・そ・・・そんな」
二「高さも申し分ない・・・これなら私の技も威力が増すでしょう」
巴「あの体勢は、脳天破壊のブレーンバスター!?」
ジ「そっそんな!普通のブレーンバスターの高さはせいぜい自分の身長ぐらいなのに!?」
二「ブレーンバスター・・・いや、この高さはまるで山のよう・・・ならば、こう呼びましょう!」
二「マウンテン・ブレーンバスター!!」
ズド―――ン
巴「二(ツヴァイ)のマウンテン・ブレーンバスター・・・今被弾、真紅脳天直撃だぁ―――ッ!!」
真「がはっ・・・」
真紅、キャンパスに突き刺さり、ゆっくりと倒れる
二「もうしばらく目を覚ますことは無いでしょう・・・」
巴「・・・真紅、完全失神です。これにより二(ツヴァイ)の勝利が確定しました」
ジ「おい!嘘だろ!起きろよ真紅!起きろぉ―――!」
ジュン、必死に真紅に呼びかける
真(あぁ・・・この感じは意識を失う感じ・・・ちょうどネジがきれるのと同じ感覚ね)
真(ジュンの声がうっすらと・・・消え・・・て・・・い・・・く)
二「・・・試合終了のゴングをお願いします」
巴「・・・私がやった方がいい?」
ジ「ううっ・・・畜生!畜生!」
その頃の真紅
真「・・・あら、ここは何処かしら?」
気絶した瞬間、真紅は別のところで目を覚ました
真「・・・誰かの世界かしら?」
真「なんだか薄暗い部屋・・・」
真紅がそう呟いた瞬間
?「デモ・・・心地ヨイ」
真「!?」
声が聞こえた背中の方を見る真紅
しかし誰もいない
それにもかかわらず
?「私ノ名前ハ・・・ローゼンメイデン第5ドール・・・真紅」
真「何を馬鹿なことを・・・出てきなさい!」
?「貴女コソ何故ココニイルノ?」
真「私?・・・私は確か・・・そうだわ!必殺技を破られて・・・負けてしまったのだわ」
?「ソウ、貴女ハ必殺技ヲ見事ニ破ラレタ・・・デモ、マダ負ケテハイナイ」
真「・・・どうせ私は気絶しているんでしょ?負けは時間の問題よ!それより貴女は誰!?」
?「私ノ名前ハローゼンメイデン第5ドール真紅」
真紅、呆れた様子で
真「あらあら珍しいわね、私もローゼンメイデン第5ドールで名前は真紅なのよ!変な冗談はよして!ただでさえいらいらしているのに!」
?「冗談デハナイ・・・私モ貴女モ真紅」
真「・・・そう、ならいいわ!姿をお見せなさい、真紅!」
?「私ナラココニイルワ、貴女自身ノ中ニ」
真「私自身の中!?」
?「ソコノ布ガ被サッテイルモノハ鏡、ソノ鏡ヲ見テミナサイ」
真紅が目の前にある布をはぎ取ると・・・
真「・・・私がうつって・・・あれ?」
?「気ガツイタ?私ト貴女ノ違イ」
真「あ・・・ああ、あのマスクは!?」
?「ソウ、貴女ノヨク知ッテルマスク・・・名前ヲ"マッドネスマスク"」
真「マッドネスマスク・・・狂気の仮面」
?「鏡ニハ本来自分ト同ジ姿ガウツルモノ・・・私ハ、貴女ト同ジニナリタイ」
真「どういう意味?」
?「私ト貴女・・・本来同一ノ存在ガ、コウヤッテ別レテシマッテイル・・・タッタ一ツノマスクガアルカナイカノ違イダケデ」
真「私にマスクをかぶれと言うの!?嫌よ!何か・・・記憶に残っていないけど、何か嫌な思い出がこのマスクにあるの!」
?「嫌ナ思イ出?」
真「思い出せない・・・でも、私はこのマスクを一度かぶったことがある・・・そして、何か事件が起こったはず・・・」
?「デモ貴女ハマスクヲ捨テナカッタ」
真「!?」
?「何故カ・・・ソレハ貴女ガ一番ヨク知ッテイル」
真「・・・"魅力"」
?「ソウ・・・ソノマスクハ貴女ガ一番欲シイモノヲ手ニ入レテクレタ」
真「・・・私の・・・欲しい・・・もの」
?「誇リ高キローゼンメイデンノ中デモ優秀ナ貴女ガ何故コンナトコロデハイツクバル必要ガアルノカ?」
真「・・・そうよ、何故この私が?この私が他のドールより劣るはずがないわ!」
?「何故アノドールニ負ケタノ?私ハ何故負ケタ?」
真「何故なの?力が足りなかったから?」
?「ソウジャナイワ・・・確カ最初ノ力比ベデハ私ノ方ガ強カッタノダワ」
真「それなら何故?そうか!知恵だわ」
?「ソウ、試合ニオケル知恵ハ確カニ向コウノ方ガ上ダッタノダワ・・・デモソレダケジャナイハズ」
真「力・・・知恵・・・もう一つ必要なはず・・・それは・・・友・・・」
?「違ウ!!ソレハ狂気!非情サヤ無慈悲ナ心ヲモツタメ私ハ狂気ヲ持タナケレバナラナカッタノダワ!!」
真「きょう・・・き・・・そうだわ、狂気・・・」
?「手ニ入レラレル!コノマスクヲカブレバ・・・無慈悲ナ力、非情ナ知恵・・・ソシテ狂気ヲ!!!!」
場所は戻ってリング上
ジ「ううっ・・・畜生・・・畜生」
巴「・・・一応、カウントをとります。テン!ナイン!エイト!」
カウントをとり始める巴
ジュンは机に這いつくばって嗚咽を漏らしている
巴「セブン!シックス!ファイブ!」
二「無駄なことを・・・」
二(ツヴァイ)、リングから降りようとコーナーへ向かって歩き始める
巴「フォー!スリー!トゥー!ワ・・・」
突然、巴のカウントダウンが止まる
その異変に二(ツヴァイ)が後ろを向くと・・・
そこにはふらふらしながらも気力で立っている金髪ドールがいた!
巴「な・・・なんとぉ―――!真紅、KOかと思いきやカウントギリギリで立ち上がったぁ―――!!」
ジ「な・・・なんだってぇー!!」
流石の二(ツヴァイ)も驚き
二「そんな・・・あんなにも完璧に脳天から落下したというのに・・・あり得ない!」
しかし、真紅は足下がおぼつかないふらふらの状態
巴「せっかく立ち上がって来た真紅ですが・・・もう・・・もう十分でしょう!見ているこっちがつらくなってきます!」
ジ「そうだ・・・もう十分だ真紅・・・もう十分だから、ギブアップしてくれ真紅!!」
ジュンの必死な願いも真紅は無反応
ただふらふらと今にも倒れそうな状態だ
二「・・・貴女のマスターがああおっしゃっていますがどうします?私も彼に賛成ですが?」
真「・・・」
二「・・・聞く耳持たずですか・・・それとももう喋る気力もないのか」
真「・・・」
それでも返答しない真紅に二(ツヴァイ)覚悟を決め
二「分かりました・・・今度こそ楽にして差し上げます!」
ターゲットに向かって突進していった
巴「瀕死の状態の真紅に向かって、二(ツヴァイ)突進していく―――!」
ジ「真紅―――!」
真「・・・マッドネスマスク装着」
真紅、胸元から黄金のマスクを取り出しかける
巴「真紅、突然胸元からとりだした黄金のマスクを装着した!?」
ジ「な・・・なにやってるんだ真紅!早く逃げろ―――っ!
二「頭の打ちすぎで可笑しくなりましたか?」
真「可笑しく?クハハハハハ!逆よ!だんだんと冴えてきたわぁ―――!」
突然高笑いしだす真紅に皆呆然とする
二「どうやら本当に危ないようですね・・・中途半端な技を仕掛けた私を許して下さい」
二(ツヴァイ)、真紅に低空タックル・・・のはずが
ガシッ
二「そ・・・そんな」
巴「な・・・なんということでしょうか!あの勢いの二(ツヴァイ)を・・・片手で止めましたぁ―――!?」
真「許す?とんでもないわ二(ツヴァイ)、むしろ・・・感謝しているのだわ!!」
真紅、豪快に片手で二(ツヴァイ)を上空に放り投げた
二「きゃあ!」
真「クハハハ・・・可愛い声で鳴くじゃない」
巴「なっなんという怪力でしょうか!真紅、片手で止めるだけでなく、二(ツヴァイ)を上空へ放り投げました!」
ジ「え?・・・あんなに力持ちだっけ?」
真(これが・・・無慈悲なる力!)
真「ククク・・・まだまだ暴れたり無いわぁ!」
上空に飛ばした二(ツヴァイ)を追うように真紅を飛び上がる
二「な・・・なんていう怪力・・・まるでさっきとは別人」
真「ククク・・・追いついたわ、二(ツヴァイ)」
二「な・・・」
ガシッ
真紅、二(ツヴァイ)をキャッチ
真「教えておくわ、今から必殺技をかけるから」
巴「何という余裕でしょうか!技の予告を平然としています」
ジ「しかも、あんなにも痛いめにあった真紅バスターを教えるなんて」
二「ほ・・・本当に頭をぶつけて可笑しくなってしまったようですね。あの技はもう二回も破っているのですよ?それを予告するなんて」
真「あの技?一体何のことを言っているのかしら?言っている意味がさっぱり分からないわぁ」
二「ふふふっ・・・哀れな人、そこまで言うのならもう一度破って差し上げましょう!来なさい!」
真「本当に良いの?それじゃあ遠慮なくいくわよ?」
真紅、徐々に真紅バスターの体勢にもっていく
真「途中で止めてなんて言っても聞かないわよ?いいの?」
二「それは私の台詞ですよ・・・この体勢、どうみても真紅バスターではないですか!」
真「ククク・・・」
巴「大丈夫でしょうか?先ほどから真紅の様子がおかしいです」
二「どうしたのですか?真紅バスターをかけるのが怖くでも・・・」
真「クハハハハハハハハハ!あー可笑しいわぁ」
突然の大笑いに面食らう二(ツヴァイ)
二「な・・何がそんなに可笑しいのですか!?」
真「ククク・・・だって、貴女さっきから私が真紅バスターをかけるのだとずっと思いこんでいるのだもの」
二「な!」
巴「あ―――っと!真紅の衝撃的な発言、なんとこれからかける技は真紅バスターではな―――い!」
ジ「え?でも、確か必殺技は真紅バスターだって・・・」
二「確かに必殺技をかけると言ったじゃない!?」
真「ええ言ったわ・・・でも、私の必殺技は真紅バスターなんかじゃないわ、ククク」
二「じゃあ一体・・・」
真「安心しなさい、今から見せてあげるから・・・っと言っても鏡でも無い限り見えないわよね、ククク」
そう挑発しながら、二(ツヴァイ)の両腿を両腕でホールド
二(さっきまでの真紅と様子が違う・・・でも、私にバスター系の技は無駄よ)
真紅、二(ツヴァイ)の首を肩に抱える
真「これで、キン肉バスターは完成ね」
二「まさか、キン肉バスターを!?」
真「冗談?私の必殺技はここからが肝心なのだわ」
巴「一体、真紅の真の必殺技とは何なのでしょうか!?」
ジ「それにしてもあいつ、さっきまでふらふらだったのに・・・何故?」
真「たしか・・・二(ツヴァイ)、キン肉バスターおよび真紅バスターは首から衝撃を受けると言ったわよね?」
二「・・・ええ」
真「だから首さえ抜ければ簡単だと貴女は言った・・・ならば、私はこうするのだわ!」
真紅、肩に抱えていた二(ツヴァイ)の頭部を前へ出す
そしてすかさず、自分の両足で二(ツヴァイ)の頭部を三角締めにする
二「そ・・・そんな方法が・・・」
真「ククク、どう?これなら首が抜けないでしょ?」
巴「なんという発想でしょうか!!真紅、相手の頭部を三角締めにすることで、頭のホールドをより強固にした―――っ!」
ジ「それだけじゃない!この技は、普段キン肉バスターがもつ五カ所粉砕にプラス三角締めの効果が追加される!これが・・・真紅の必殺技か!?」
真「何を言ってるの?まだまだこんなものじゃないわよ、ツインテール・ハンド!」
真紅のツインテールがみるみる手の形に変わっていく
そして、ツインテールが二(ツヴァイ)の両腕を掴む
二「あ・・・ああ」
真「着地時に手でもつかれたら威力が半減するからね」
巴「なんと、真紅のツインテールがまるで意思を持っているかのように手の形へと変形し、二(ツヴァイ)の両腕を掴んだぁ―――!」
ジ「なんだろうこの感じ・・・二(ツヴァイ)には悪いけど、この技のフォームはとても美しい」
巴「同感です・・・」
芸術性、それを二人は感じとった
真「どうかしら?他に穴はある?」
二「ああ・・・無い・・・完璧すぎる」
真「そうでしょうね、これで完成よ!究極の真紅バスター・・・その名も・・・」
真紅、一呼吸置きその名を告げる
真「アルティメット・真紅バスター」
巴「アルティメット・真紅バスター・・・今明かされた真紅の必殺技!」
ジ「究極(アルティメット)・・・この技に相応しい名前だ」
真(この発想も全て非情な知恵のおかげ)
真「ククク・・・さて、何か言い残すことがあれば今のうちに言っておきなさい」
二「あ・・・う・・・今の時点で、私の負けは確実です・・・だから」
真「だから?」
二「ゆ・・・許して下さい」
真「!?」
巴「おっと!?あまりの必殺技に恐怖を抱いたのか?二、あっさりギブアップを宣言した!」
ジ「当然だろな、この時点で二(ツヴァイ)は完全に戦意を喪失している」
二(ツヴァイ)の顔は酷く青ざめていた
真「それは無理な注文だわ二(ツヴァイ)、"途中で止めてなんて言っても聞かないわよ?"って聞いてあげたでしょ?」
二「そ・・・それは」
真「それに、私の体もこの状態で硬直状態になっているの・・・技を仕掛けたい・・・成功させたいのよ・・・この気持ち分かってくれる?」
二「う・・・うう・・・でも」
真「もう一つ言わせてもらうと、技を仕掛けている最中のギブアップは無効とされているわ・・・この技を受けた後にギブアップしなさいな、喋ることができたらね」
二「あ・・・ああ」
二、恐怖でがちがちに震えている
巴「技を止めるよう願う二(ツヴァイ)ですが・・・どうやら真紅は聞く耳をもたないようです」
ジ「そ・・・そんな、真紅一体何故!?」
真「油断をしたり、相手に情けをかけると足下をすくわれる・・・私も油断から勝負に敗れたことがあるわ、貴女の姉、薔薇水晶によってね!!」
二「お・・・お姉様が!?」
ジ「そ・・・そうかあのとき」
ジュン、真紅が薔薇水晶に不意打ちをくらった場面を思い出す
真「敵は・・・徹底的につぶす!文句は言わせないわよ、二(ツヴァイ)!」
二「はい」
真「ん?急に素直になったわね」
二「ここで文句を言えば、私はお姉様を否定することになります」
二(ツヴァイ)の顔から、既に恐怖の色は消えていた
二「私にとってお姉様は尊敬に値する存在・・・そのお姉様がやったことなら文句は言いません」
真「・・・ふん、美しい姉妹愛ね!いいわ、手加減無くやらせてもらうのだわ!!」
ジ(真紅、お前は本当にそれでいいのか?)
巴「今、真紅が落下していく―――!」
真(これが狂気・・・情けなどかけず、相手を徹底的にたたきつぶす!これが正しい!)
真「アルティメット・真紅・・・」
真紅が技の名前を言う途中、小さな声が聞こえた
二「・・・こわい」
真(・・・え?)
その小さな声は、真紅の耳元にいる二(ツヴァイ)からだった
二「(ぐすっ)壊れたくない・・・壊れたくないよ・・・」
真「!?」
恐怖からでた二(ツヴァイ)の本心
真紅、一瞬躊躇するが・・・
真(情けはダメ!情けはダメ!情けはダメ!・・・非情・・・無慈悲・・・狂気)
ぴちゃっ
何かの液体が真紅のほおに付く
真(なっ・・・何?)
真紅、恐る恐る横を見る
二「怖いよ・・・おねえちゃん・・・」
それは、二(ツヴァイ)の涙だった
真「うわああああああああああああああああああ!!!!」
真紅、深く目をつぶる
真「バスターッ!!!!」